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神輿造りの親方・古谷晃康 |
鎌倉朝日新聞 平成14年8月号 |
「神輿は日本の総合工芸の代表的なものと思う。そこには伝統工芸の粋が集約され、神霊の乗り物にふさわしい気品と美がある。」 神輿づくりに魅せられて四十年。手掛けた神輿は五百基以上に及ぶ。心血を注いで造った神輿が、無事かどうか例祭に駆けつけることが多いという。
「神輿洗いと称して川や海に入れてみそぎをする習わしもあれば、神輿振りといって激しくもみ合い、乱暴な担ぎ方をする場合もある。それだけに傷みがくることもあり、神輿や担ぎ手のことが気になる。子を思う親のような気持ちかもしれません。」 ワツショイの気勢とともに町内を練り歩く神輿は祭りの華である。
春の鎌倉祭りに始まり夏、秋祭りへと続き、各地の神社、町内の神輿が出る。
神輿の歴史は奈良時代にさかのぼる。かつては神輿の動座は人馬の背に頼っていた。平安中期に御霊信仰が盛んになり、飾った神輿が全国的に広まった。
神輿にも六角形や八角形など多くの種類があるが、普通は四角形で、大別すると屋根、胴、台座の三つからできている。「神輿は全体がクサビによって組み上がっている。中心を貰いている芯柱はクサビでつなぎ合わせて上下の動きを止めている。四隅にある四本柱もクサビによって水平方向の動きを止める働きがある」神輿について分かりやすく説明してくれるが、専門的な部分が多く簡単には飲み込めない。分かったことは本体が木地のままだとそれほどの重さはないが、屋根の鳳凰など装飾金具をつけていくことで、ずしっとしてくる。ちょっとした大人用の神輿でも二〜三百キロ前後の重さになる。それを激しく動きながら担ぐ。造り手からすれば一番気になるのが神輿の安全性という。「何十年も経た神輿は最下部の台輪に割れが入ったりすることもある。組み立てのクサビを抜くことで一つ一つが分解できる。祭り前後の点検や手入れは大事です。のちの修理のことを考え、クギや接着剤を使ってはだめです」 東京芸大工芸科を出てこの道を歩みだした。神輿の修理がきっかけで、総合工芸の魅力にはまり修業を積んだ。
一九七一年に都内で東京神輿センターを設立。神輿の製作・修理を中心に祭り関係の仕事を一手に引き受けてきた。
静かな雰囲気を求めて鎌倉に移ったのが九四年.ひと声かければ専門分野の職人たちが、近在からさっと集まってくる。
本体を作る木地師、彫刻をする彫り師、漆師、金属の彫金師、鋳物師など神輿造りでは十種類以上の職人の手をわずらわす。
二年前、鎌倉岩瀬の五社稲荷神社の宮神輿を一年かけて造った。計画、構想を含めると十年がかり。九月の例祭にはこの真新しい神輿が繰り出す。
古来からの形式や技法を生かしながら彫金・彩りなどに、ユニ−クな感覚を盛り込んだ神輿も手掛け、創意工夫にも熱心である。
貞子夫人との晩酌が楽しみという、鎌倉市十二所在住の神輿親方だ。 |
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