先祖代々言い伝えられている秘密を皆様に初公開致しましょう。
それは「神輿の大ききは測って良いが、重さは決してロにしてはならない」ということです。
昔々、お祭りの神輿があまりに重かったので、どのくらいあるのかと重さを量ったことがありました。
すると神様が「神の重い軽いを秤(はかり)にかけるとは何事か!」と大変怒り、作物が大不作になってしまいました。
もう一つは、江戸時代に、かの紀国屋文左衝門がみかん船で大儲けした金で純金、純金箔の金具の神輿を造り、”文左の千貫神輿”と大威張りをしたので、幕府の怒りを買い黄金の神輿を没収されてしまったのです。以後、神輿の重さを語るのは御法度になったといいます。
しかし、確かな記録が残されていないので、語の真相ははつきりしていません。
さて、神輿はなぜ重いのか、またなぜ実際より重く言うのか、ご存じですか。
神輿は重しをつけて重く造るのではなく、必要とする木材や鋳物や金具等を加工し組み立てると、自然にあのような重さになるのです。
また、神輿本体はさほどの重さではなくても、鳳凰を上に載せ、飾り網を巻き、担ぎ棒を通すといっそう重くなるのです。
神輿の重さを実際より重く言うのは、単に自慢する以上の心理的な効果があるようです。
この神輿は重いので、気合いを入れ、気持ちを合わせて(和一緒意=ワッショイ)担ぐように言って事故や怪我などないよう、気を引き締める効果もあります。 また担ぐ前に神官に入魂式をしてもらうと、神様が神輿にお移りになられたと、心理的に重くなった感じもします。
もっとも、神輿の大ききは見れば分かりますが、重さは分からないので、格好の自慢の種になっているようです。
私どもでは、神輿が完成しても仕上がりの重さは量りません。注文主が重さをお尋ねになっても、「皆様のご自由になさって下さい。」とお答えしています。
昔は出来上がった神輿の運搬に船をよく使いました。
重いものほど運賃が高くなるので、「神輿は神聖なものだから重さを量ってはいけないのだ」と理屈をつけ、船頭さんとやりあっていたのではないか、とも想像します。
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