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神輿うんちく学12
祝儀(広辞苑より)
1・祝いの儀式
2・祝意を表すために贈る金品。引き出物。
3・芸人、職人、女中などに与える華。こころずけ。
老棟梁(町内の元大工の棟梁)「よつ。親方、精がでるねえ。昨日は立派な神輿を引き渡したので、たんまりご祝儀が出たんだろう。俺が付き合ってやるから、お祝いに一杯やりに行こうよ。」
親方「冗談言わないでくれよ。水引は豪華なもんだが、中身はもう無えよ。職人達に分配するにも足りなくて、自腹をきっちまったよ。」
老棟梁「そりゃ可哀想に。時代が変わったね。良い仕事をすれば注文主も喜び、俺たちもご祝儀という形で報くわれたんだがね。」
親方「神輿を造るんでさえ、お客はデパートで物を買う感じだし、車みたいに工場で生産していると感違いしているよ。とても祝儀なんて。」
老棟梁「近頃はご祝儀の意味を知らなくなってきたんだよ。職人仕事つてのは目論み通うりには行かないし、無理な日程や注文がつくとなおさらだよ。その足の出た分をご祝儀で補なうんだよな。」
親方「職人達に急ぎや、細工で無理をやらせりゃ、それなりにねぎらってやらなきゃな。
それに神輿を注文してくれた町会のお祭りには、お祝いを持っていったり、アフターサービスもしなきゃな。その費用も頂いたご祝儀から出すんだよ。」
老棟梁「最近は町会も組織化されたからね。ご祝儀は余計な物だと思ってんだよ。その上何でも安けりゃ良いと思っている。」
親方「神輿を注文するお客の様子が変わるにつれ、神輿屋も変わってきたよ。商社化、商売人化してきた所も多いよ。自分で神輿を一基も組み立てた事がなくても神輿の親方面をしているし、東南アジアで部品を作らして、パートに組み立てさせている。これじゃ日本には神輿職人が近いうちにいなくなっちまうよ。まして最近は職人仕事を止めて、銀行から金を借りて、親代々の地所に小奇麗なマンションを建てて、喜んでんだからな。」
老棟梁「おいおい、俺にあてつけかい。そういやあ、後を継いだ息子も何だかグチをこぼしていたな。トラックじゃなくて乗用車でネクタイを締めて仕事がしたいなとか。今のままだと女の子にもてないからとか。」
親方「ほれ見ろ。俺んちのご祝儀でタダ酒を飲もうなんて了見起こすから、手前んちの足元がフラついてきたんじゃねえのかい。」
老棟梁「えれえヤブヘビだ。足元が明るいうちに急いで家へ帰って、一杯やりながら息子の相談に乗ってやらなけりゃあ。またな、親方。」
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