リンク
|
|
|
神輿うんちく学11
「親方、遊びに来てやったよ。」
「そりやご親切なこった。今日は何の遊びだい。この忙しいのに、ご隠居。」
「今日は分かりがいいじゃないか。いやなに、親方のところは職人さんの出入りがずいぷん多いなと前々から思っていたのでね。そのあたりをちょっと知りたくてね。」
「しよっちゅうじやまをしに来て、家の出入りの職人達ともだいぶ顔見知りになっているんだから、いまさら教えることはたいしてないよ。」
「そりや儂だって神輿本体の木部を作っている職人さんや金具を作っている職人さんや、漆職人さんぐらいは分かるよ。しかし分からない人も結構出入りしているじやないか。そう年寄りに邪険にしないで親切に教えてやっとくれよ、親方。」
「今日は泣きの手で来たね、ご隠居。しょうがねえな。さっきご隠居が言ったように、まず木で神輿の本体を作る木地師、彫刻をする彫り師だよね。金属加工では鋳物の鋳物師と、主に板物金具を作る錺職がいるよ.この四人が主な職人だよ.あとは仕上げの漆師と鍍金師だ。」
「親方そうすると六種類の職人さんで神輿は作れちやうのかい。以外にすくないんだね。」
「そんなんで神輿が造れるなら苦労はしないよ。仕上関係の方は色々いるよ。塗りの方では漆師の他に蒔絵師、彩色師、金箔師だ。金具の仕上げの方では鍍金師の他に象嵌師、七宝師、さらには鈴師、綱師がいて、あの様な豪華な江戸神輿が出来上がるのさ。」
「そいじゃ、親方は釘を打って金具を取付けているからクギ師かい。」
「からかうんじゃない。パチンコ屋じゃあるまいし。私の役目は釘を打つだけじゃないよ。それだけじや親方は勤まらないよ。親方の第一の役目は,お客さんがどういう神輿を造りたいと思っているのか予算を考えにいれながら案を造り上げる事だよ。それから、各々の職人達に指示を与える事だ。例えば神輿本体の木地を造るにしても、先に鋳物師に鋳物を鋳させ、それを木地師に渡して木地を造らせないと、鋳物と木地の寸法が合わなくなっちまうからね。本体木地が出来上がったらそれを錺職に渡して、板物金具を木地に合わせて造らすという具合だよ。」
「親方、そんなにあっちこっちするんなら一ヶ所に職人を集めたほうがやり易いじゃないかい。」
「そいつは無理なんだよ。鋳物師は火を使うし、木地師は火を嫌うし、塗師はほこりを嫌うしで、とてもとても無理なこった。それにしてもご隠居、今日は職人の事にえらく興味を持ったけれど、七十の手習いで神輿職人に弟子入りする気になりだしたのかい。」
「とんでもない。年寄りの冷や水ってやつだよ。又遊びに釆てやるからね。」
|
|